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遠藤ケイの民俗学

草の根民俗学〜生きた「民俗」を訪ねて四十年



自身も里山に暮らす遠藤ケイは、40年以上にわたって生きた「民俗」を聞き書きしてきた。
好奇心の赴くままま取材を重ね、実際に自分でやってみる、作ってみることを重ねてきた。
そうした中で生み出された文章やイラストには独特の個性と魂が宿る。

そんな遠藤ケイは、
民俗学についてこのように語っている・・・

私が志向する民俗学は「草の根民俗学」と勝手に名付けています。

それは、自分の足で旅をし、自分の目で見、手で触れられるもの以外は書かないという実践主義を堅持したいからです。

必ず現場に出かけていき、実際に自分でやってみること。 杣(そま)、木挽き、木地師、砂鉄採取、狩猟、炭焼きなどの山の労働や、捕鯨、カジキの突きん棒漁、潜水、追い込み漁はじめ、 各地に伝わる伝統的な原始漁法にいたるまで、その真髄に迫れるまでやってみます。

鍛冶や、木工、竹細工など職人仕事も、その道の達人の指導を受けて、それこそ職人になるつもりでやってみる。さらに、家に帰ってきて、原稿を書く前に自分一人で作ってみる。

そうすると、どうしてもうまくできないときがあります。あれほど、職人から手取り足取り教えてもらってできたことが、一人になるとできません。そんなときに、職人仕事というのは、どんな小さな工程でもはぶいてしまったら、モノが完成しないということに改めて気付かされます。そして、自分が聞き逃してきたこと、見過ごしてしまった部分が、実は職人仕事のもっとも大事な「核」だったと思い至ります。

職人仕事というのは、作業工程を簡略化しながらも、各部分に一点の無駄なく技の粋が凝らされています。それは、全体の形だけ見ていても分からないことだと思います。

実用道具の、虚飾を廃した究極の機能美。そして、機能を徹底的に追及した先に、職人の「遊び」としての意匠が凝らされる。その見極めができないと、職人の手仕事を理解することはできません。れは、机上の学問では分からないことです。そういう意味で、私の民俗学は、徹底した現場主義からなる「草の根民俗学」と名乗っているわけです。
いまとなっては、実際に自分で見たものでないと、それがどういう成り立ちで出来上がっているかが分からず、恐くて書くことができません。

もちろん、民俗学は、人間が生きた歴史でもありますから、遠い過去に遡って、その時代時代の文化や、人の営みを知る必要があります。それについては、多くの歴史家や学者、作家、民俗学の先人たちが、優れた労作を残してくださっていますので、それらの資料、文献に頼らざるを得ませんが、基本的には、それに全面的に頼るのではなく、そこから自分なりの考察、推理を組み立てていきながら、現在、形として残っているものにどう繋いでいけるかという作業が大事だと思っています。
実際、民俗は生きています。時代や、土地の風土性によっても人の暮らし方、生業があり、それに即した民俗が定着してきました。しかし、その暮らしや生業も、時代とともに変っていき、なかには本来の形が分からないくらいに形骸化してしまうものもあります。

それは、アカデミックな民俗学の偉大な側面でもある統計学的、分類学的な枠から落ちこぼれ、切り捨てられていきますが、私などは、それも“生きた民俗”として認めたいと思っています。それが、在野の民俗研究者の強みでもあるとも思っています。つまり、私のやっていることは、便宜上「民俗学」と言ってはいるけれど、正等な学問的な民俗学ではなく、「学」をはずした、ただの「民俗」でいいと思っているのです。また、だからこそ、私でもできる作業として、ひとつの切り口を開けられるという、ささやかな自負を持つことができると思っています。

それというのも、もう30数年前のことになりますが、私が試行錯誤をしながら、日本各地の仕事師や職人の生活や労働習俗を取材した「男の民俗学」を週刊誌に連載していたときに、劇作家の飯沢匡さんが、私を対談相手に選んでいただき、わざわざ私の家まで来られましたが、その際に、「もし、柳田国男や折口信夫の時代に、遠藤ケイがいたら、日本の民俗学はもっといい形に発展してきただろう」と言っていただいたことが、どんなに勇気づけられたか分かりません。そのことが、いまの私を支えているといっても過言ではありません。

私は、これからも体が元気な間は、いや、歩けなければ這ってでも現場に出かけていって、「いま」の民俗を記録し続けようと思っています。そして、いま改めて気付くことは、私が40数年、「いま」を記録してきた民俗が、すでに過去の記録や文献になっているものが多いという事実です。
まさに、民俗は生きて流動しています。

遠藤ケイ

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